4月25日(日)午前10時から、オンライン朗読会を開催しました。朗読作品は井伏鱒二(母校文学部仏文科中退)の『鯉』と『山椒魚』、参加者は5名。
初めに、各自に簡単な自己紹介をお願いしたところ、「漢字が読めないかもしれない」「予習をしていないので、感想が纏まらないのが心配」との発言がありました。世話人としては、そのような危惧を払拭してもらいたく、「漢字は自分が思った読み方で構わない」「感想は思ったことをストレートに言って差し支えない」と前触れしました。
ウォーミングアップに『鯉』を朗読して、その後『山椒魚』に入りました。
感想の交換では、2つの作品を朗読したことで、作品の比較ができて、話しやすくなったと思われます。
また、世話人は、たまたま、会の準備をする中で、『山椒魚』の改変(著者は、昭和60年新潮社版自選全集発行の際、原作『山椒魚』から最後の17行[山椒魚と蛙の和解する場面]を削除)を知り、それを参加者に紹介したところ、感想交換にも弾みがついたようでした。
以下、当日の感想交換の一部を紹介します。
「『鯉』は、物語の起承転結の起伏がなく時間が流れる小津安二郎の映画のようで」「『山椒魚』は、コロナ禍で閉じ込められた生活をしている自分たちの心境にも通じるものがある」
「オリジナルを改変しない方がよいのではないのか」
「ビジュアル的に映画を見るように話のストーリーを単純に思い描いていたが、白い鯉も頭が肥大した山椒魚も人間関係を動物や生物に置き替えていて、人生の生き方、接し方、ひいては人間の醜い本能を描いたり、最終的には同じ仲間を作って思いやりを作っていこうとする姿勢が見えてきた」
「毎年訪れるワイフの実家に井伏の生家があり、福山文学館には彼の資料が展示、今回の作品は鯉やサンショウウオに人間を置き換える作風で、後年、多趣味な彼のグローバルな生き方に太宰はじめ多くの作家が慕ったのではないでしょうか?」
「日曜日の午前中というこの時間、文芸作品が『お経』のように響いてきて、静かな気持ちになり、何とも言えない落ち着いた気持ちになりました。次回の朗読会を今から楽しみにしています」
本朗読会は「学校の国語の時間を忘れましょう!」「誤読・脱線は大歓迎です!」をモットーに、母校出身作家の文芸作品の朗読と感想交換を通して、LA稲門会メンバー同士の親睦を図るべく企画しています。次回は10月24日(日)の予定。気軽にご参加ください。
オンライン朗読会世話人・宮原文隆